誰かが言った。「絶対に自分を安売りしない方が良い」
高校の時の同級生に、部活にも入らず頭も良くない、ヤンキーってほどワルでもないがヤンチャグループ側気取りの鼻につく奴がいた。
特に接点もないので視界に入らなければなんてことのない存在だった。
卒業後そいつを街で見かけた。大手企業の制服を着て働いていた。
僕から見ても大した取り柄もないしょうもない奴が、身の程知らずにも大手企業を受けて受かってやがった。
一方僕は、科で2位の成績で部活のキャプテン。(地方私立の底辺実業校ではあるが・・・)
なのに大手企業なんて無理に決まってると思い、身の丈にあった地元の工場へと就職。
自分を安売りしてたのだ。世の中を知らなすぎた。
そして散々な目にあってきた。(今思えば若いうちに経験できたことは良かったと思えてはいるが)
そういえば息子が小学校時代、部活のコーチがチームのキャプテンを絶賛した。市内でもトップクラスの身体能力だ、と。
それを聞いた息子は「だめだ、あいつには勝てねぇ〜」と。それを聞いた僕は当時のTVドラマ「リーガルハイ」の古美門研介のセリフを真似て、
「どうして自分のほうが素晴らしい選手だと思わないんですか?」って言ってやった。
当時、古美門研介のセリフを暗記するほどハマっていた息子は、ギクリとした顔をしていた。
僕がこのセリフを引用したのは、自ら自分には無理だと決めつけた息子に過去の自分を見たからだ。
ところで話は変わって、内定もらいました。
思えば7、8年前だったろうか?飲食店でバイトをしていた知り合いが、大手企業に就職が決まったと言う話を聞いた。
求人を見てから資格を取り、未経験で応募、採用となったそうだ。
正直僕も資格取ったら受かるんじゃね?なんて思ったりしたが、思っただけだった。
その後会社でその資格を取っておけば有利になるかも?って状況になったので取り敢えず取っておいた。
でも取っただけ。知り合いが受かった会社のことも頭にあったが、将来の学費や住宅ローンの事を考えると冒険などできなかった。「そもそも求人が出てないかもしれないしな」って諦めていた。
そして時は経ち、別居、離婚成立、学費に目処が立ったところに来て、今度は会社の業績悪化。転職を諦めてる場合ではなく、転職しなければ生き残れないって程の状況になってきた。
そして転活開始。持っている資格を活かせる求人を探す。僕の自動車免許は「中型車(8tに限る)」のプレミア免許。
ドライバー業は人手不足なのでいけるか?他に高圧ガス系の資格もあるので燃料の販売の職に就けるかも?
そして思い出した。一応資格を取っておいた例の大手企業。なんと求人が出ている。
でも未経験の50越えを相手してくれることなんてないだろう。と、今になっても自分に制限をかけて諦めようとする思考癖は治らないまま。
あれだけ自分を安売りしてはいけないってことを思い知った筈なのに・・・。
だが僕の残りの人生がかかった今回の転活。自分に認知行動療法的手法で暗示をかける。
応募するだけなら何も難しいことではない。駄目なら書類選考で落とされるだけ。面接でお見送りになってもご縁がなかっただけ。駄目でも燃料販売系もあるし、ドライバーの仕事もある。
そして面接を終え通知を待つこと2週間。永かった。こりゃ落ちたな、って思ったり、落ちたのならさっさとお祈りメール一通で済むはず。時間がかかってるってことは脈ありか?いや、脈なさすぎてお祈りメールすら忘れているのでは?
気分の浮き沈みが激しくしんどかった。後に上司に退職を申し出たら「なんか様子が変だった」って言われた。
いつも通りを装っても心情はダダ漏れしてた(;一_一)
流石に採用通知を読んだときは、震えた。今までかなりしんどかったもんな。
もし知り合いの話を聞いてなかったら。もし資格を取っていなかったら。もし離婚が成立してなかったら。もし今の会社に少しでも期待が持てたなら。もし自分を安売りする思考のままだったら。もしエイジ・オブ・アクエリアスじゃなかったら。
人生は思い通りにいかないものだが、思いも寄らない良いことも起きる。
一発逆転のチャンスに何故かワイドオープンの僕のところに絶好のパスが来た。僕はためらわずにシュートを放った。左手は添えるだけにして。
準備だけはしていた。来るかどうかも分からないチャンスの為に。いろんなタイミングが揃わなければ成立しないことだった。
黄色いパーカー着てビール呑んでるおっさんが言ってた。「人生、生きてみると面白いこと起きたりしますよ」
色んな人に感謝をしなければならない。でも何より今まで自分の苦労を労いたい。(どうやったら良いかは分からないが)
と、長々と書いてきたが、まだ内定をもらったに過ぎない。まだ健康診断はあるし、数ヶ月の試採用期間も乗り超えなくてはならない。そして新人のくせに老害認定を喰らわないよう職場に馴染まなければならない。
だが今までの職場での消化試合のような日々に比べたら、なんと充実していることだろう。
報われた。アンディーのように、下水配管をくぐり抜けて塀の外へ出たのだ。
僕の場合、27年かかったけどねヽ(`▽´)/